がっつりネタバレ注意!
※「星を継ぐもの」、「ガニメデの優しい巨人」を読んだ方向けですのでご注意を!
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「ガニメデの優しい巨人」読みました!
J・P・ホーガンの名作SF、「巨人たちの星」シリーズ、「星を継ぐもの」の続編。
久々に面白い名作SF読もう!と思って手を出した前作「星を継ぐもの」は、月で発見された5万年前の「現在の人類と全く同じ」死体の発見、という謎から始まり、いろんな分野の科学者・研究者たちの協力によりなんとかざっくり「太陽系の過去のストーリー」を解明していました。
星を継ぐもので判明した事実を一言で言うと、
「地球人は今は亡き惑星に連れて行かれた生物がその惑星で知性生物として進化した後、核戦争により星が消滅した衝撃で飛ばされた月に乗せられて地球へ来た存在」
でした。
とんでもないですね。
事実というか、これが判明していくさまがまた面白いんですけども!!
さて、もうそんな感じの前作はかなりわくわくしましたし、面白かった!と満足してたらまさかの続編の存在を確認。(知らなかった)
終わり方的にも綺麗に締まっててそんな感じではなかったし、確かに謎はまだまだあるけど、
まさか次作で散々話に上がった「異星人」が直接出てくるなんて思わないじゃないですか!!
これは読むしかないじゃないですか!!
買いました。
SFって単語が慣れないの多いから読み始めが時間かかるんですが、ストーリーに引き込まれるとあっという間に読んじゃうから楽しいんですよね。
少しづつですが読み進めて、後半一気に読み終わりました。
今回は主に「ガニメデの優しい巨人」の個人的感想です。
「巨人たちの星」シリーズ、今のところ「星を継ぐもの」と「ガニメデの優しい巨人」の作品しか読んでないのですが、どちらとも普通のSF、というか物語とは違う印象を受ける作品ですね。
なんというか、「悪意ある敵」が現れない。
自分たちの「興味、研究分野」にのめり込む研究者が多いせいなのか。
「謎を解き明かしたい」というひとつの共通の目的を、登場人物のほとんどすべてが抱いているからなのか。
人のものを奪って、自分の目的を達しようとする「悪役」がいないのが印象的です。
研究内容を経済的・政治的に利用しようとする人はいるけど、あくまで物語上は、他人に何かを強要しているわけでもなし。
それは異星人である「ガニメアン」も同様ですね。
「相手に不愉快を与える可能性のある情報」を隠すことはあれど、それもお互いの円滑な意思疎通の為に行う事であって、あくまでお互いの善意の協力によって、真実の究明や科学の発展を求めて話は進みます。
異星人が出てくるという衝撃すぎる展開も、ただただ、「太陽系の過去ストーリー」を解き明かすための装置であって、そこは前作「星を継ぐもの」と変わりません。
この作品はあくまでも、過去にミネルヴァと地球を主とした、太陽系で起こった事実にたどり着くお話なのですね。
だからこそ最後、過去の事実を知ったガニメアン達が静かに地球を去る描写も心にきます。
異星人を招いたことで、星自体に新たな争いの種をまくことになる。
SFではよくある展開。
ガニメアンのひとりはそうはならないかもしれない、と地球人に希望を見ていますが、過去の地球の争いの歴史と生物の性質を直に知り、ガニメアンの優しい性質をも知ってしまえば、きっとその予想もあながち外れはしないだろうという暗い未来が見えてしまいます。
そうならないかもしれないけど、そうなるかもしれない。
それなら、お互いの安全の為、地球を去るという選択をするのも、慎重なガニメアンの性質からすればおかしい事ではありません。
だけど実際の問題はそこだけではなく、「地球人誕生の成り立ち」にガニメアンが関わっていたことが大きいと、最後に判明しますね。
「地球人とガニメアンの衝突への忌避」ではなく、「新たな太陽系の知的生物である地球人という後進に道を譲る」ため、ほとんど希望のない旅に出ることにしたガニメアンたち。
地球人にも、指導者以外のガニメアンたちにも秘めたままで。
あまりに優しくて、哀しい。
地球人の持たない情報を餌に星に居住区を主張するでもなく(むしろ地球人から提案されていますが)、ミネルヴァを破壊したルナリアンの責任を問う訳でもなく。
自分たちが絶滅する可能性の方が高いにも関わらず、自分たちはすでに太陽系では過去の存在である、という判断を下したのです。
実際の市民的なガニメアンはここまで割り切った判断はできないかもしれませんが、科学者であるという立場だからこそよりそういった判断が出来るのでしょうね。地球人も同じようなものだし。
あくまで「科学者」たちがメインだからこそ、感情だけに寄らず冷静に「種としての」判断を下し、実行できる。
最初AIに地球人を精神疾患的扱いされた時は「ああ、悲しい誤解によって異星人と争いが生じてしまう展開か・・・」と思ってたんですけどね。そうはなりませんでした。
地球人は争いで物事を解決する時期からはある程度脱しており、ガニメアンも「学び合おう」とする歩み寄ってくれる存在だった。
「自分たちと成り立ちの違う存在である」という事を冷静に、なんなら科学的、生物学的に把握したうえで交流を図ってくれるし、わかりやすく説明もしてくれるので、そのあたりは読者としても分かりやすくて面白かったですね。
そしてそれが「本来知性生物として進化するはずの無かった地球人への謎」とかにだんだんとつながってくるんですよ、面白すぎる。
体に毒をもつことで肉食動物がいなくなったミネルヴァの生物たち、二酸化炭素耐性を持っていたがそれを遺伝子操作により排除したガニメアン、ミネルヴァへ運ばれた地球生物、絶滅したミネルヴァの生物たち、地球人の驚異的な成長スピードなどなど…
ガニメアンやミネルヴァの生物たちと地球生物の色々な話が判明する度に謎が増え、そして最後それが綺麗にまとまる様は「星を継ぐもの」同様、ミステリー小説の謎解きシーンを見ているような、爽快感があります。楽しい。
そういえば前回も最後の最後、おいしいところはダンチェッカー先生に持ってかれてましたが、今回もハント博士よりダンチェッカー先生が先に真実に辿り着いてましたね。
というか二人は相変わらず仲良しで笑っちゃいます。
前作ではあんなにバチバチしてたのに‥‥
肉食動物を前にして驚いているガニメアンに、嬉々として説明を続けようとするダンチェッカーを制止するハント博士のシーンは仲良しだなあと思ってめっちゃ笑いました。
あと、作品の中でも終盤まで結構謎だった体に毒をもつミネルヴァの生物が急に絶滅した理由が、ガニメアンが運び込んだ地球生物にその毒は効かなかったから食べ尽くされた、というのが判明した時もちょっと笑いました。
散々二酸化炭素濃度に耐えられなかったのではとか、別の災害が起こったのではとか言われる中「普通に地球生物に食べられたのでは…?ああでも毒を持ってるから食べたら死ぬのか…」とか考えてた自分、答えあってた。単純明快。
特に抵抗も隠れもしない草食動物がたくさんいたら、そりゃ食べられるよね…。
そして最後の最後に明かされる、「ガニメアン語で通信したら反応した謎の異星人の存在」。なにそれ!!!!
まあガニメアンの子孫は確定みたいなんですが、地球ずっと監視されてたんかい!ってなりますね。
今までその存在を隠していたくせに、ガニメアン語で通信した途端反応するのなんなんだ。
地球の方も今までに何かしら発信は試してみたりしてただろうし…もしかして無視されてたのか…
方向とかが重要なのかな…(決まった星に向けて送信したものしか受け取れないとか)
ガニメアン語しか読み取れないとか…?謎ですね。
でもそのおかげで、絶望の旅へ向かったガニメアンたちに希望があることを知ることが出来たので、読後感が少し明るくなりました。
肝心のガニメアンたちはそれを知らないけれども…。あと少し待っててくれれば…!
優しく去っていった彼らがいつか、その星へ到達してくれると良いですね。
できれば、誰もが生きてるうちに。
さて。
とはいっても、まだまだ続編は続くようです。
次のタイトルは「巨人たちの星」!
シリーズ名にもなってるし、ここまで来たら絶対面白い事は確定してます。私の中で。
普通に巨人たちの星に到達したガニメアン達が出てくるかもしれないし、でてこないかもしれないし。
次こそは銀河大戦争でも起こるかもしれないし。(別に起こってほしくはないけど)
「太陽系のストーリー」は今回であらかた判明したので、次は「滅亡の危機に扮したガニメアン達の行方」が分かるのでしょうか。
わくわくしつつ、また少しずつ読んでいこうかなと思います。
楽しみです~!
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では!