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読書感想

【小説感想】夏への扉(ロバート・A・ハインライン)【名作SF】

更新日:

※「夏への扉」のネタバレ感想となります。読んでない方はご注意を。


今回は本の感想を。

読書に本格的にのめり込んだ高校生の頃から、SFは結構好きなジャンルでした。
働き始めてからは読書する気力もなくて、本を読むことから遠のいていましたが、最近また時間と心の余裕が出てきたので、SFの名作でも片っ端から読んでいこうかな、となど思い立っています。

 

 

「夏への扉」は、昔本屋でちらりと見かけて、気になってた作品です。
SFの名作選の中に名前が挙がっていたのと、何となく惹かれるタイトル、あと猫が出てくるということで読みたいなあと思っていて、思ってただけだったんですが、この前やっと読む気になったので購入しました。

ただ、最初はなかなか読むのに苦労しましたね。
というのもストーリーとしては、

親友と恋人に裏切られた主人公ダンは、愛猫ピートと一緒に未来へのタイムスリップである、冷凍睡眠の契約を行う決意をする。しかし、一度はその冷凍睡眠を中止しようと考え直すも、再び裏切られた彼は強制的に、しかも愛猫ピートを置いて、冷凍睡眠を実行してしまう。主人公ダンが目覚めた時、そこは30年後の世界だった。

というものです。
この親友と恋人に裏切られる回想が、私にはなかなか辛かった。
恋人である彼女は恐らく最初からそういう目的で二人へ近づいたんだなと分かるんですが、二人で会社を興し、成功の道をたどっていっていた、発明家である主人公と経営を担う親友の溝が、ただ悲しかったですね。それぞれ求めるものが違って、そこを彼女に付け込まれたんだとしても、そうするよう決めたのは、親友である彼であったからですね。
しかもその裏切りは、法的には一応正当であるという用意周到さが見られて、結構な怖さも感じました。皆さん書類はしっかり内容を読んでサイン(日本だと押印かな)しましょうね。

また、愛猫のピートの存在も、この裏切りの悲しさを助長させていました。
ダンはピートをとても大切にしていることは、物語を読んでいくととてもわかるのですが、ダンが親友と元恋人と衝突するシーンでは、猫のピートにとっても、主人公は同じく大切な存在なんだなと、より感じられます。しかし、元恋人に中止しようとした冷凍睡眠を強いられることになる中で、ピートとダンは離れ離れになってしまうのです。距離ではなく、時間で。それまで二人の絆のようなものが描かれていたために、より一層その別れが悲しく感じられました。

始めの頃は、そういった人間関係やピートとの関係が主になっていたので、これはSFなのだろうか?と思いつつ読んでいましたが、冷凍睡眠による未来へのタイムスリップが出てくることで、一気にSF感が出てきましたね。まあまさか自分の意志ではなく強制的に冷凍睡眠させられるとは思ってなかったのですが。

未来パートでは、悲しみつつも比較的環境に適応しながらダンは生活を整えていきます。それだけでもまあ面白く、発明家であるダンの視点で見る未来の様子も十分面白かったのですが、途中から、思ってもいない方向へ物語は進んでいきました。

基本的に冷凍睡眠は睡眠により思考や身体機能を停止させることで実現する、片道のタイムスリップです。過去に戻ることはできません。この点では、現在の科学力でも(実現可能か不可能化はともかく)理論的には理解できます。
ですが、ひょんなことからダンは、SF的な正真正銘のタイムスリップが存在することを知ります。ただしそれは未来へ行くか過去へ行くかは分からない、1/2の賭けでもありました。いや怖いな。

結果的に、そのタイムマシンで過去へ飛んだダンは、親友や恋人に知られぬよう、それまでの伏線を回収するように、自主的に動き回ることになります。
実は物語を読んでいる中で、何か所もあれ?と不思議に思う箇所が出てきていました。
例えば、未来世界でのロボットなどの発明品が、ダンの発想と全く同じものであったり、その発明者がダンの名前であったり。裏切られたその日に乗ってきたはずの車が、親友と恋人に見つからなかったり。その他にもいろいろありましたが、過去に戻ったダンは、それらの不思議に思われた点を、辻褄を合わせるように動いていきました。タイムスリップ系の話ではよくタイムパラドックスの話題になりますが、この「夏への扉」では、それを否定しているのも面白かったです。過去に行って動くことで未来が大きく変わってしまう、というのはよくある展開ですが、過去へ行ったから未来が変わったのではなく、その結果を知っている主人公が、その未来に合わせるように過去で動くことで、未来が確定した、というような話でした。面白い。

離れ離れになった直後のピートと再会し、仕事関係でやるべきことを終えたダンは、もう一つだけ、やるべきことをするために、ある少女のもとへ向かいます。

それは主人公の親友の娘である、11歳のリッキィです。
リッキィはダンと猫のピートが大好きで、ダンの元恋人と結婚するという父親とは縁を切る決意をする程、決断力のある少女です。ダンは冷凍睡眠をする前も、再び冷凍睡眠をするうえでも、この少女の未来、特にダンの元恋人の魔の手が、この少女に及ぶことをとても心配していました。しかしリッキィは、自ら父親の元を離れる決意をすでにしていました。ダンは、リッキィに多大なお金を残し、いくらか成長した後で、冷凍睡眠をするという選択肢を残しました。

しかしまあ、自分の大好きな人と長い間離れることを知ったリッキィの、「結婚してくれる?」はとんでもない破壊力がありましたね。そんな健気なお願いをされたらうなずいてしまってもしょうがない。
ただやっぱそのあたりで、主人公ロリコンなのでは…と思ってしまいましたね。一応、精神年齢的にも身体年齢的にも未来では別に特に問題がないところを考えると、年齢差って何だろう…と考えてしまいますが…年齢差を冷凍睡眠という力技で解決してくるの、とても強い。タイムスリップならではの方法ですね。

でも、リッキィはダンとの約束を守らずとも良かったわけですよね。
あまりあるお金を持っていたのなら、それで何かを成すこともできただろうし、成長する間に恋に落ちた相手とそのまま結婚してもよかった。幼いころに交わした年上のおじさんとの約束を、守らなくても幸せにはなれたはずです。それでも少女は、その莫大なお金で冷凍睡眠を実行した。それは、リッキィにとって本物の恋だったという事なんでしょうね。でもやっぱダンはロリコンになるのでは…という思いはぬぐえない。
いや、二人が幸せなら良いんだけどね。

そんな感じで、可能性をかき集めて最善を尽くそうとする主人公は、愛猫ピートとともに再び冷凍睡眠を実行し、すべてを手にすることができました。昔からのたった一つの友情以外は。それが唯一、この話の少し悲しいところですね。仕事もうまくいかず、妻とも(おそらく)上手くいかず、娘にも逃げられた親友は、主人公ダンを陥れた元凶のひとりではありますが、このお話の一番の被害者なのかも、と読み終えて思ってしまいました。

とまあそれ以外は、最初の暗い人間関係とは裏腹に、気持ちの良い主人公の行動によって、読んでいて出てくる小さな違和感を最後に片っ端から回収して、最後はスカッとする、思ったより爽快感のあるお話でした。
読んでて楽しい主人公は良いですね。発明を考えているシーンだとか、明らかに不幸と思われる場面でも自分の力で何とか生きていこうとするさまだとか、やっぱりかっこいいです。冷凍睡眠ならではの仕掛けがとても面白かった。流石名作。とても満足です。おすすめ。

 

 

また、他の名作SFとかも引き続き読んでいきたいな、と思ってます。

 

 

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