なんだか無性に小説を読みたい気分だったので、ふと目に入って惹かれたので購入してみた本、「オーブランの少女(深緑野分)」。私が購入したものは別のカバーが付いていて、そちらは綺麗な黒髪女の子が佇むイラストでした。(あいかわらず黒髪少女に弱い。)

短編集で、まだ2つしか読んでないのですが、それだけでももう買ってよかった!と思えたのでとりあえずそのうち一つをちょこっと感想でもメモしておきます。というか吐き出したい…!最近ラノベとかキャラクター文庫的なものばかり読んでたので、久々に、ちゃんと小説というものを読んだ気がします。(あっちはあっちで好きですが)

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オーブランの少女 (創元推理文庫)
深緑 野分
東京創元社
2016-03-20

「怖くて哀しく愛らしい 絶望的な少女たちの短編集」
「互いの痛みが 私たちの絆だった」
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この帯はずるいですね!魅力的過ぎて、もう手に取るしかない。
昔からこういう、少女や少年メインの陰のある小説が好きなんですよね。多分最初の頃に甲田学人さんとか桜庭一樹さんの本とか読んでしまったからだとは思いますが。
それでは以下オーブランの少女の感想。
他の短編も面白かったらまた書くかも。


※ネタバレ注意!


<オーブランの少女>

物語は、美しい庭園を管理する老姉妹の姉が、謎の老婆に殺されるというところから始まります。何故姉は殺されたのか、謎の老婆は誰なのか、そして、姉の後を追って自殺した妹の心情はいかなるものか。話が進むにつれ、その美しい庭園と、老姉妹の過去の姿が見えてきます。

その昔オーブランは、貧しい家庭の病気を持つ子供を受け入れる、サナトリウムでした。ここにいる少女たちは花の名前を与えられ、赤・青・紫・黄色のいずれかのリボンを手首に付け、生活をしていくよう伝えられます。
しかし、貧しい家庭で育った主人公の少女は、そんな施設に疑問を抱いていました。
こんなうまい話はあるはずがない。私達はきっと、親に売られここに来て、いずれまた別の人へ売られてしまうのだ、と。


そこまでのあまりに美しい夢のような草花と少女たちの描写から、私もなんとなくそういうお話なのかな、と最初は思っていました。美しさに相反して、少女たちを育てて売ってしまう残酷さ、というのはよくあるテーマですし。
けれどこの物語の「残酷さ」は、そういった類いのものではなく、もっと直接的な狂気や死と、戦争という現実でした。

少女たちは、保護すべき「病弱なユダヤ人の子供」であり、オーブランはそれを隠す為の施設。親たちは子を売ったのではなく、その子だけでも助かればと逃したのだと、知った時には、もはや少女たちは狂気の中にいたのです。
想像していたよりも、周りの大人達は少女たちにとって味方であったんだな、という事に驚きましたが、その一方で、もはやどうにもならない程、「現実の世界」の方が残酷に、少女たちと「先生」を追い詰めてしまったのだと知り、胸が詰まりました。

残酷に世界に殺されるくらいなら、この場所で殺してしまおうー。

そんな優しさのように見える殺意が少女たちを蝕んでいく様はあまりに恐ろしくて、読了後もふと何度かそれを思い出してはその恐ろしさでびくびくしてました。いやめっちゃ怖いですよ。優しそうな顔して生首持ち歩いてたり毒盛ったり、輸血する血液を別のものにしようとしたり。

そういえばリボンの色の意味で、先生の殺意が明らかになるシーンは凄いなーと思いましたね。リボンの色は血液型の識別のためで、それを取り替えることで血液凝固を狙ったとのことですが…。怖すぎる。失敗して悲しそうな顔するのも怖すぎる。

あまり主人公の少女が自覚してないところを見ると、この頃はまだ血液型等について一般的では無かったんでしょうかね?どうなんだろ。顔の美醜が基準かと主人公が疑ってたから、やっぱり売るんだな…!とちょっとミスリードしてるとこが好きです。そういうのすぐひっかかります私。

下水道で先生から逃げるシーンはまさにホラーですね。いやもうほんと夢に出そう。
追いかけられるのもそうですが、その後もずっと生き続けてるのほんとどうにかしてください怖いです。最終的に、少女達が老婆になるまで生きるわけですが、なんかもう無理。あんなものが地下にずっといると思うと気が狂いそうになると思うのですが。それでもオーブランから逃げ出した二人の少女は、それを「飼う」事にするわけですね。おかしい。

先生が、老姉妹二人が亡くなったあとそのまま死んだことを考えると、彼女を非現実的にも生かし、移動した少女たちにも迷わずついてこれたのは「少女を全員殺してあげる」というその一心からなのだろうなと、考えてしまいますね。もはや覚えてはいなさそうですけど。
また、梯子はずっとあっただろうから、何故「姉」の殺害が、何十年もたった「その時」だったのだろうかと、疑問はあります…。なんでかな。

最後まで読んだあと、冒頭を読むとやはり物悲しく思いますね。しかしまあ、「その時」まで、二人は長く一緒にいれたんでしょう。顔が全然違うのに姉妹と思われるのは、二人過ごした時間がそういった雰囲気を作り出したのでしょうから共に二人が歩んだ時間が確かにあるということは、その美しいオーブランの庭園が証明している。だからこそ、苦しくとも穏やかに、隠された秘密を携えながらも、「現実の世界」を生き抜いたんだろう、と思えるのです。「妹」が自殺したのは、共に生きていた「姉」を失ったからなのか、もしくは先生の執着から逃れられないと悟ったからなのか…それはどうなんでしょうね。

ともかく、予想を裏切られつつも残酷な現実に晒される少女たちを描いたこのお話は、心と私の性癖に大分刺さったのです。こういうのが読みたかったんだ私!あと先生のイメージが多分しばらくトラウマになりそうな予感(怖い)。

素晴らしい作品を作者様に感謝!
他のお話の感想も書けたら書きます。
では!